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02/03
Wed

スノーパークというサービス
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THE WELBECK GALLERYのTWGダイアリー。冬の愉しみ4回目。今日はスノーパークについて考えてみたい。


まず、前提としてお話したいのは日本のスノーリゾートが歴史的にヨーロッパの影響を受けているという点。そもそも日本で降雪のある地域の地形そのものが九州、北海道を除き広大なスペースが極めて少ないことも、このことに影響を及ぼしているが、歴史的に日本の山岳スポーツはヨーロッパアルプスを中心とした地域の影響を色濃く受けて現在の形に収まっている。

例を挙げるとすれば、日本における大規模な宿泊施設を付帯するリゾート開発は1970年代からで、特に1987年制定のリゾート法以降に立ち上がった事案が多い。これらは、北米型のリゾートをひとつのモデルにしているが、基本的には長期滞在にも耐えうる宿泊施設とその周辺付帯施設、個人経営ではなく大規模な組織による運営などがその特徴と言える。ただし、日本の場合は一般的な働く人がとれる休暇の長さなどを考慮した結果、長期滞在という点においてはその利用頻度が低いと見積もられ、例えば、キッチン付きの宿泊施設やリゾートに隣接するスーパーマーケット、さらにはレストランのメニューの豊富さなどにまで配慮されたリゾート計画はほとんど無かった。

一方、日本の伝統的な山岳スポーツの楽しみ方は、夜行列車で山を目指し、小さな温泉宿に泊まって帰ってくるというもので、山岳鉄道や索道事業者(人を運ぶ手段)、個人経営の旅館(宿泊)、国立・国定公園(場所)というのがセットになっている。

ヨーロッパに目を向けてみよう。リゾートが投資の対象との認識が広まって以降、完全にそうとも言えなくなったが、ヨーロッパにおいては未だに小規模の宿がリゾートの最もよい位置に建っており、またその多くが個人経営故に良い宿の予約を取るのは非常に難しい。*

*予約システムが未発達という点と、予約のほとんどが早期にその宿の顧客で埋まってしまう点が特徴。この2つのポイントは互いに因果関係にあるとも言える。

それら小規模の宿は中には気取ったサービスをやっているところもあるが、多くはアットホームな付き合いを顧客との間でしており、それこそ顧客にとっての「山の家」の感覚に近いものがある。また顧客は毎年決まった時期(例えば、毎年2月の第1週というふうに)にそこに滞在することが多い。

ここで一度整理すると、北米型のリゾート事業は宿泊、付帯施設、索道の全ての事業を一元的に大規模な事業主が行う事に対して、ヨーロッパ型はそれぞれの事業が独立しており、村や町として機能しているということになる。
日本国内にどちらの形態が多いかと言えば、伝統的に後者ということになり、大規模なものは比較的新しいものであることがご理解いただけると思う。

さて、やっとスノーパーク。
スノーパークの設置は多くの場合、索道事業者(この場合、リフトで人を運び、コースを滑ってもらう事業とする)が行う。スノーパークは解りやすく言えば、圧雪車でボコボコのコースをきれいに整える作業のバリエーションのひとつとも言える。ニーズから考えれば、普通に滑りたい人が圧倒的に多いので、人工地形を用意するスノーパークのニーズは今のところそれほど高くはない。極端な話をすればスノーパークを用意しなくても多くの人のニーズは満たせるのである。

さて、それではなぜスノーパークを設置する必要があるのだろうか?

先ほどスノーパークの設置は圧雪作業のバリエーションのひとつと述べたが、圧雪作業自体が立派なサービスであることをまず知る必要がある。圧雪は単にコースの上を圧雪車でなぜているのではない。圧雪車を走らせる方向などによって、コース上に「グルーミングパターン」と呼ばれる圧雪跡が残る。例えば、この圧雪跡が自分が滑る方法(落下方向)に対して直角に方向に走っていたらどうだろうか?それは正に永遠と何キロも続く洗濯板の上を滑ることになる。これは想像するだけでも恐ろしい。

ということで、皆さんがそのような思いを過去あまりしたことがないくらい、グルーミングは気をつかって行われている。これは気持ちよく滑っていただくためのサービスである。

スノーパークの設置はジャンプなど派手なアイテムに目が行きがちだが、これも「そういう地形を滑ってみたい」というニーズに対して提供されるサービスである。しかも、パーク造成の技術か進んだ現在、万が一失敗しても怪我をしくにくいジャンプ台造りなどのノウハウが蓄積されつつある。こうした技術の多くは北米型リゾートで修行を積んだ日本人(その国内第一人者はAREA 51'sという集団)だったり、自然と伝わって来きたノウハウなどが徐々に浸透することでゆっくりではあるが、かなり定着してきた。現状で言えば、規模の違いはあるにせよ北米レベルのスノーパークを国内で楽しめる可能性はかなり増えてきたと言える。


あとは、設置されたスノーパークをできるだけ多くの人に楽しんでもらうことが課題だ。スノーパークが最も進んでいる北米のリゾートでは、スキー、スノーボードスクールのレッスンを受けている小さな子供達のグループが、インストラクターに先導されてパークの中に入ってくるのをよく見かける。ストイックにターンの練習ばかりをするレッスンではなく、「リゾートを楽しむ」レッスンを受けているようにも見える。

スポーツ、趣味なんでもそうだが、多くの場合マンネリ化は自分の中から発生する。他のスポーツと異なり、スノースポーツの醍醐味の一つはリゾートを楽しむこと。これは、キレイなホテルの部屋で部屋飲みするということだけではなく、用意されているサービスの中から自分が挑戦したことのない事について少しでも興味を持つ事から始まる。愉しみを知っている人はその前に愉しみを知る努力を惜しまないということを忘れてはいけない。