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05/06
Thu

メディアスポーツ解体 / 森田浩之 / 2009 / 東京・日本
CATEGORY:GALLERY

森田浩之:LSE (London School of Economics) メディア学修士。元NHK記者、Newsweek日本版副編集長を経て現在ジャーナリスト。 *著者紹介より



以前、このDAIRYでも、「筋書きのないドラマ」はスポーツ番組の面白さの原点であることに触れた。実際にこの筋書きのないドラマを見たいと思う人は多く、私もその一人であることに間違いない。

ただ、全く知らない人やチームが試合しているのを見るほど、面白くないスポーツ番組はないのも事実だ。では、何がスポーツ番組を面白くしているのだろうか?

今回紹介する本は主にそのからくりについて論じられている。

例えば、試合の見どころとポイントをうまく紹介することもその一つだし、実際に試合に出ている選手のストーリーについて語ることも、これまで多くの人にとって縁のなかった競技でさえ「筋書きのないドラマ=それだけスリリング」なもの変えてしまう。

私が今回感じたことは、マイナースポーツと呼ばれるスポーツには人を惹き付けるだけのストーリーが存在しないか、あまり紹介されていないということだ。

メディアは様々な制約から日頃からマイナー競技や選手を追っかけることもできない。また、競技団体や選手達は競技に打ち込むために、わざわざストーリーを語ろうとすることもしない。これはごく自然なことであり、なんら問題のないことだ。

ただ、スポーツを巡っては競技者、観戦者またはその他多くの人の間に共通の目標のようなものがあることも確かだ。例えばそれは少年少女の夢であったり、努力が報われることの証明であったり。

もし、これら共通の目標のようなものが認識されるのであれば、試合の結果だけが重要ではなく、そのほかの正に「ストーリー」も重要であることが自ずと理解できるはずである。

問題は試合とストーリーがごちゃ混ぜにならないこと。ストーリー先行で試合内容がストーリーと不釣り合いな場合、ストーリーを好む人を除いて、多くの人々は競技そのものから離れてしまう。また、競技および試合内容中心の場合、多くの人にとってその競技は自分には全く関係のないものになってしまうのである。


少しだけ本の内容に戻るとしよう。本の中には例えば、ナショナリズム、ジェンダーなど普段普通にスポーツ接している人には少し縁遠い言葉も登場する。しかしこれらは、スポーツとメディアの関係において上述した「ストーリー」をはるかに超える効果をもたらすものであるとも言っている。確かにそうかも知れない。

この本はスポーツに関わる人だけではなくジェンダー問題、ポスト冷戦後の世界、ヒーロー論などに興味のある人にも興味深く読んでいただける一冊だ。

『メディアスポーツ解体-見えない権力をあぶり出す』
森田浩之
2009年12月第一刷
NHKブックス
ISBN978-4-14-091148-8 C1336