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    Fri

    価格戦略入門 / 吉川尚宏 / ダイヤモンド社 / 2009 / 日本
    CATEGORY:GALLERY

    消費者が買い物をする際に最も自信をもっているもの。それは価格に対する考えである。

    その理由は様々なものが考えられる。例えば、人々の日々の生活で購買行動は避けては通れない。言い換えれば人はほぼ毎日何かを買っている訳で、その都度「お金を支払う」という行為を行っている。お金を支払う場合、その支払う金額が購入しようとするものに対して、高いのか安いのか、それともちょうど良いのかなどを常に意識していることになる。当然、自動販売機などで購入する清涼飲料水の様に、ほとんど無意識の内に設定された金額を支払っているという場合も存在する。
    いずれにせよ、モノを買い、お金を支払うという行為は毎日繰り返されているということになり、その経験そのものが人を日々訓練しているのである。

    ではなぜ、それだけ訓練されているにも関わらず人は価格の問題で迷ったり困ったりすることがあるのだろうか?

    ひとつは訓練されていないモノを購入する場面がそれにあたる。例えば一生を通じて1回のみ、または数回のみしか購入しないもの、例えば住宅、自動車など(この場合マニア、コレクターは除く)、たとえ多くの情報やしっかりとした価格表示が行われているものであっても、それが本当に価格に似合ったモノであるのかどうかの判断をすることは容易ではない。

    また、住宅や自動車など高額なもの以外にも同じようなことは存在する。始めたばかりの趣味に使う道具、新しい技術を伴うハイテク家電製品、インターネット接続サービスなども、自分の中に基準となるものがほとんど存在しないために、どんな価格を提示されても「正直、本当のところはわからない」という事態に遭遇するのである。

    そこで迷った自分にひとつの目安を与えてくれるものが「予算」という考え方だ。これは至ってシンプル。必要なものまたは欲しいものに対して「いくら位までなら出せる」または「出すつもりでいる」ということをここで言う「予算」とした場合、その範囲内にそのモノやコトが収まるのであれば、一気にその不安は解消されるかのように思われる。

    しかし、現実は何も変わらない。なぜならそもそもの迷いの原点は「失敗したくない」という気持ちであり、その失敗への不安は本来ならばかなりの時間をかけなければ解消されないためだ。


    例えば、1000円以下で買えるデニム。このダイアリーを読んでいただいている方にとって、「お金をドブに捨てるような」行為か「ディスポーザル(使い捨て)感覚」か、「非常にコストパフォーマンスに優れている」ものなのか、「単なる資源のムダ使い」なのか。よくメディアで報道されている「価格破壊」や「販売好調」という言葉と少し距離を置いたところで考えてみるのも興味深いことだと思う。


    さて、本の内容。
    価格をつける側の様々なケースが紹介されており、経済学の教科書に登場する基本的な概念と価格決定のプロセスを丁寧に解説するというもの。実際の価格は様々なプロセスを経て決定されているが、その途中、「これはこういうものだから」というプロで言う常識のような考え方が多く登場する。本書はこの常識のようになっている部分を経済的概念の基本をおさらいすることで、より正しい判断・分析ができるように導こうとするものだ。これは経験豊富ないわゆる値付けのプロから、先輩に指導をしてもらっている人に至るまで非常によい情報であり、いわゆる「勘と経験」だけに頼る方法からより正確な判断を可能にするための第一歩と言える。しかし、普段ミーティングで口にしないことをしっかりと文章で説明してくれている部分については、少々丁寧すぎると感じるかも知れない。ただプロセスを図式化したものについては素晴らしいの一言につきる。私自身、この図を社会人駆け出しの頃に見ていれば!と感じた。


    価格にまつわるお話は本当に尽きることがない。最近では冒頭にご紹介したような消費者行動の観点が、より細かく経済的概念にMIXされることにより、設定された価格にも様々な意図が反映されるようになった。ただそのような中で私が価格に求めるものは以外と単純である。


    消費者に提供されるものの全てには必ず「良心」が含まれるべきである。


    これが完全に保証されるのであれば、少なくとも「買って損をする」という多くの人が抱く不安の解消につながるのではないかと考えるのである。



    実践プロフェッショナル価格戦略入門
    ーケースで学ぶ利益最大化の理論と方法
    吉川尚宏
    ダイヤモンド社
    2009年6月18日 第一刷
    ISBN 978-4-478-00958-1