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05/11
Wed

変わった部屋との出会いから考える滞在型人生
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コンセプターの坂井直樹がその著書『デザインのたくらみ』(2006年)の中で触れていた考え方をご紹介しよう。

ガウディの「カサ・ミラ」(1910年)、ミース・ファン・デル・ローエの「レイクショア・ドライブ860/880」(1951年)、ル・コルビュジエの「ユニテ・ダビダシオン」(1952年)など20世紀に登場した集合住宅の傑作は多く存在する。集合住宅の役割やその思想などについてはここでは割愛するが、ともかく、そこに集う人々の日々の生活を考えたデザインがより人生を豊かにするというものだ。坂井はこの章でテレンス・コンランの六本木ヒルズに対する「旅」というコンセプト提示を紹介した上で、住まいも定住から滞在へという考え方を展開している。

写真はこの冬の仕事で滞在したあるホテルの一室である。比較的ゆったりとしたその部屋は浴室と寝室を繋ぐ「窓」が存在する。この窓、本来はレイアウト上部屋の奥に押しやられるホテルの浴室からでも、その窓の外に広がる美しい森林の風景を楽しもうという試みなのだが、浴室を単に体を洗う場所と考えていては、その考え方に気付く事さえもできない。ゆったりとバスタブに浸かって、本を読むなりするような習慣があるか、または、様々な考えかたの詰まった部屋そのものを多く経験すれば、この窓について「へぇ素敵な窓」と思う事もできるのである。

私も実際にこれまで度重なる住まいの引越と、旅先でのホテルの滞在を繰り返して来た。その都度出合う楽しい部屋とその思想の数々。一所に住む事ができない単に落ち着きのない人生とも言えるが、この滞在の繰り返しは私にとっては少なくとも人生を豊にして来たと言える。京都に住むという土地の選択の問題は別として、少なくとも家を買えない人だけが賃貸住宅に住む時代ではなくなったが、「自前と借り物」という考え方がここ日本では今なお根強い。ある特定の物件に「住み続ける不自由」と「滞在してみることを選択できる自由」について住まいという問題で一度考えてみては面白いのではないだろうか。