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    ケンタッキーの思い出
    CATEGORY:2015

    表六甲。天覧台から灘、芦屋、西宮、尼崎を望む。



    私は10代の頃ケンタッキーフライドチキンでアルバイトをしていた。


    阪神間の各駅停車しか停まらない駅の駅前にその店はあって、直営店ではあったものの歴史は古くしかも実験店舗的な意味合いもあり、イートインが6席程度しかない、売上のほとんどがテイクアウトの店舗だった。


    一回の調理に要する時間が約30分。その際1台の圧力釜で約40ピースのチキンが調理できるが、テイクアウト主体の店舗のために回転が速く、バイト時間中はカウンターに立たない限りほとんど調理しっぱなしだった。

    特にクリスマスの時期になると大量買いが頻発するので、店舗の最大調理能力をフルに使い切ってのオペレーション。その中でもマニュアルに則った調理を確実に行い、時間あたり320ピースを朝の8時から夜の10時まで調理し続けた。

    フラワーとスパイス、ショートニングにまみれ、高温のクッカーの前に立つ。どこまでもつくりつづける。いまでこそブラックバイトという言葉があるが、ある意味ブラックな部分の飲みこむくらいの勢いであった調理場。そこで得たものは時給530円なりの幸せではなく、ベタな話「仲間」であった。


    社員の人や店長は日々の売上ターゲットに追われつつ、食材および資材のオーダーを最低限必要な数量のみ行う。まさにリーンなオペレーション。現場で調理するメリットを最大限に活かすために、自分達アルバイトにも調理する量のコントロールについてはかなり詳細な調理のタイミングを丁寧に教えてくれていた。

    そして、アルバイトも見切りの調理を実行するのではなく、閉店後のロスを最小限にすることにやりがいを感じていた。


    ここまで書くと非常に美しい話だが、実はその全ては厳格に規定されたマニュアルによってコントロールされていたと思うと、少し恐ろしい感覚を持ったりもする。

    ただ、そこで働いていた人は社員もアルバイトも含め全員が「何かのせい」にすることはしなかった。売上が下がったら自分達の調理と接客の質をまずは疑った。仲間のアルバイトが急な休みをとっても、最終的には一人でその場をなんとかする術を身に着けた。

    今思うことだが、そこにいた全員が単に「育ちが良かった」と言えばそれまでかもしれないが、そんなことがあったとは思えないし、マニュアル絶対主義でもなかった。何があのケンタッキーの店の「強さ」をつくっていたのかが未だに謎だ。



    ここにきてヒントがあるとすれば、それはやはりひとりひとりの「自信」であったのかも知れない。そして、マニュアルには「自信を持て」とは一言も書いてなかったことも事実だ。