



せっかく買ったボード。できれば永くつきあいたい。
それにはボードの工場出荷時のスペックと自分の欲しい性能をどこでアジャストするか?が非常に重要になる。
永くつきあうコツは、ボードを購入する際、ボードの工場出荷時のスペックを今の自分が目指すレベルのピークに持ってくることが肝要だ。言い換えれば、試乗会などで試してみていきなり全てがフィットするボードは、近い将来必ず飽きが来る。道具は間違えた選択をすると、使い物にならない可能性を持っているが、それは使う側に道具にあった技術的レベルを要求しているものと考えればよい。ならば、少し高いレベルの道具を当初は使いやすくチューニングして、道具に慣れてきた時点で本来のスペックに再度チューニングして戻してやる。最終的に工場出荷時のスペックまで戻ってきたら、あなたはその道具の要求する技術を習得しているということになる。
さて、今回紹介するFile Guide(ファイルガイド)はチューニングの要のひとつであるエッジを整えるものだ。プロダクトとして優れた点は2つ。まずは非常に簡単に扱えること。100%保証はできないが、使い方さえ間違えなければ誰が使っても失敗しない。使い方の説明がきちんとなされてさえいれば、エッジチューナーとして市場の中では最もユニバーサルデザインに近いと言えるだろう。そして二番目に単純に90°エッジだけをつくる簡易のエッジチューナーではなく、ベースエッジ0°から3°とサイドエッジ90°から93°のビベルが可能であるということである。
現在市場にあるボードには単純にベースエッジ0°というものも依然として多数存在するが、上位メーカーのボードにはエッジのひっかかりを無くすためにベース1°、サイド91°のビベルチューニングが施されている。これはボードのベース面から1°だけ垂れた角度で直角のエッジをつくっていることになり、これまでの簡易のエッジチューナーではエッジ角を整えることさえできなかったのだ。それをユニバーサルデザインの中で可能としたのがこのFile Guideだ。
使い方は至って簡単。トップのノブを緩めてガイドを好きな角度に合わせる。写真の状態は1°。これでサイドとベースをそれぞれファイルの方向を入れ替えてファイリングするだけで1°ビベルの90°エッジが施工できる。
File Guide : 8925円
File Guideを使ったエッジチューニング事例




ということで今回顧客のボードのエッジチューニングに際して、File Guideを使ってみる事にした。これまでは、古いRED(BURTON TNTの前身)のアルミ合金製のFile Guideを使用してきたが、今回はこのもっと簡単なFile Guideで同じ作業ができるかどうかを検証してみる。
File Guideの説明の際に、ボードを永くつきあうためのボード選びのコツをご紹介した。今回のチューニング依頼は全くこの方法を守ってFeelgood44を購入した女性のお客様からのものである。
このお客様とは当初から、少しだけ背伸びかもしれないスペックのFeelgoodをチューニングで乗りやすくし、その後ボードに慣れてきたら(乗り手の要求が上がってきたら)徐々にボードを本来のスペックに戻すということで、ボードの面倒を見させていただいている。
納品時はトランジッションゾーンの取り方を中心にエッジを「緩めて」よく動くボードとしてお渡しした。結果としてはノーマルスペック上のサイドカット半径やオーバーオールエッジレングス(エッジ全長)よりも小回りが効き、ひっかかりが少ないボードになったが、約6週間後「少し戻してほしい」との依頼を受けた。それだけ乗り手のレベルと要求が上がってきたのである。
写真はダリングの様子。1枚目ではダリング長(トラジッション長との関連はこの場合無視する)が長めにとってある。2枚目がファイルガイドを用いてファイリングした後。ダリングが始まるポイントがボード中心から見てかなり先端方向へ後退した。
作業としてはサイドエッジ4カ所とベースエッジ4カ所の合計8カ所。エッジを元に戻す作業として、ファイリング、ストーンがけとその行程を繰り返し行う。さすがに時間は小1時間を要したが、これまで使ってきたファイルガイドと変わらない効率で作業ができた。
さて、今回は完全にこのFeelgoodを工場出荷時のスペックに戻したわけではなく、納品時と工場出荷時のスペックのちょうど中間あたりとした。これで納品時と比較して速度に対する安定感が上がり、ボードの反応も素早くなる。これでもまだボードとしては本来の性能を発揮させるま余裕を残しているので、より永くこのボードで楽しむことが可能となる。